「海境~うなさか」―
そこは海にあるという、神と人とが住む境。
今は昔、時の大臣・藤原房前は、幼少の頃に亡くした母の面影を求め、
讃岐の国、志度へと赴く。 その道すがら、耳にした妙な噂。
「志度の浦には恐ろしい竜女が現れて人を海に引きずり込む―」
一抹の不安を胸にしつつも、その浦へ辿り着いた房前。
その耳に、どこからともなく美しい歌声が流れ込む。
なつかしく暖かいその歌声に導かれ、憑り依かれたように、
人気の無い入り江へ
歩みを進める房前を待っていたものは
竜王の呪い、奪われた宝珠、真に大切なものとは何か。
海境に、嵐が訪れる―