この想い、何と呼ぶべきか―
妖(あやかし)の力を持つ、九尾の狐が扮する玉藻の前。
国の主を惑わせ、国を乗っ取り、混沌を広めようとする話である。
しかし最後には、高僧によって石に封じ込められてしまう。
(能楽「殺生石」より)
さて、とある国の物語。
そこに、玉藻という一人の娘がいた。 玉藻は捨て子で、
本来親から受けるべき愛を知らずにいた。
そんな玉藻を、不憫に思い引き取ったのは、
高僧と名高い法源大師だった。
しかし、すぐに法源大師は亡くなり、
寺を継いだのは若輩僧・二代目法源。
だが、放蕩の限りを尽くしていた二代目法源に、
寺は荒れて果てる。
日々の暮らしも立ち行かない程であったが、
それでも玉藻は逞しく成長していった。
そして、幾度かの四季を重ねた、ある日の事、
先代・法源大師の古い友人、
那須国家老・阿部康成が訪ねてくる…。
愛ゆえに生まれる情念… 愛ゆえに生まれる信念…
そもそも、愛とは何か…
様々に存在し、意味付けられる「愛の形」のひとつが、ここに幕を開ける―