時の帝には、姉思いの弟宮と、弟思いの姉宮がいた。
姉宮の壱師(いちし)は怜悧聡明、
これが男子であればと常々噂された。
弟宮の蝉丸は琵琶の名手、
腕前は楽聖と名高い源博雅と相称された。
時の帝は姉弟の自慢が日課、母である中宮はいつも笑顔で見守る。
…穏やかな毎日はいつまでも続く筈だった。
宴の席にて、中宮が突然謎の死を遂げる。
同席していた蝉丸も失明してしまった。
父帝は、目の瞑れた子など要らぬと蝉丸を宮中から追い出してしまう。
そんな父帝の陰惨な行いに、
考えがあるのだと必死に自分へと言い聞かせる姉宮。
失意に哀しむ彼女の元へ、七日後の夜。
『妾の仇を…妾は殺された…仇を…壱師…妾の…母の仇を…』
権謀術数絡み合う宮中。それぞれの思惑が交錯する中…
姉宮は自ら髪を切り“逆髪”になる。
大切な人を失った時、あなたなら どうしますか?