平安の昔、九州は筑前(現在の福岡県)蘆屋の受領である真備が、土地の利権争いの訴訟の為、京の都へ行くこととなる。
供には夕霧という侍女を連れて行くが、妻の頼子は秋風寂しい筑前にひとり留守を任される。
それから三年。
便りも何もない夫に、自分は忘れられてしまったのか…いや、そのようなことあるはずがないと、信じたい心と、現実の有様に頼子は心も体も弱っていく。
本当に夫は訴訟で都にいるのか、妻への想いは。
そこへ夫と供に都へ行っていた夕霧が帰郷する。
都で何が起こっているのか、頼子の想いは真備へ届くのか。
冷たい月の光の中、砧を打つ音が秋風に乗って万里を渡る――